SAP S/4HANA Cloudの導入方法論 ~SAP Activate~

プロアクシアコンサルティングでは SAP S/4HANA Cloud, Public Edition のご紹介・ご提案から導入のご支援までご提供させていますが、本ブログでは SAP S/4HANA Cloud における ”導入方法論 ~SAP Activate~” について、その特徴および概要を説明します。

目次

  1. SAP S/4HANA Cloud の導入方法論 ~SAP Activate~
  2. SAP Activate フェーズと支援ツール
  3. SAP Activate に準拠した導入ステップ
  4. まとめ

SAP S/4HANA Cloud の導入方法論 ~SAP Activate~

こちらは、SAP S/4HANA Cloud, Public Edition の導入フローを表しています。
SAP S/4HANA Cloud 導入推進を目的とした方法論を駆使しながらプロジェクトを推進する為に、SAP が提唱する ”SAP Activate” と呼ばれるフレームワークです。
SAP が培ってきたベストプラクティスを組込み、同時に最新テクノロジーを迅速に適用するための ”Fit to Standard” や Cloud 利用を基本思想としています。

この方法論には、以下の6つのフェーズが定義されています。

SAP Activate のフェーズはいずれも重要なステップにはなりますが、特に構想フェーズと評価フェーズを重要視しています。

SAP S/4HANA Cloud, Public Edition は、システムアップグレードにより継続的な機能向上・SAP が提供する最新技術を得ることが最大のメリットとなります。
その為には、Fit to Standard によるベストプラクティスである SAP 標準機能の活用が前提となります。

クラウドのメリットを享受する為には、構想段階よりクラウドマインドセットの醸成を行い、評価フェーズにおいても Fit to Standard が将来の継続的な企業価値につながることを念頭に置いて業務を標準機能に適合させてゆくことを行っていく必要があります。
これにより、業務も現場に特化したものから標準プロセスへの変革をとげ、システム利用の効率化を図り、結果的に、経営の意思決定に必要な情報の収集・整理のリードタイムに寄与し、意思決定そのものを迅速に行うことができるようになります。

SAP Activate フェーズと支援ツール

SAP Activate における各フェーズの実現の為に、システム環境と各種ツールが用意されています。

SAP Roadmap Viewer

SAP S/4HANA Cloud 導入に関するガイドラインとして SAP より提供されています。
このロードマップは、SAP Activate 方法論に従って、プロジェクトの開始~終了までをフェーズを定義し、推奨される実行タスクやアクセラレータ (WBS、資料のテンプレート、情報リンク先、等) から構成されています。
※SAP とのデータ連携開発など、SAP 外での開発が想定される場合は、そのスケジュールやタスクも考慮する必要があります。

Best Practices Explorer

過去から蓄積した知見をもとに SAP 社が作成した標準業務プロセスの集合体=ベストプラクティスに素早くアクセスする為のポータルとなります。
プロセスは ”スコープアイテム” という形で整理されており、その中には標準機能の全体概要を把握する為のプロセスフローや操作方法の学習を支援するテストスクリプトやチュートリアル等として提供されています。
また、プロセスフローは SAP Signavio Process Manager に取り込んで編集することが可能で、Fit to Standard の検討における業務標準化の整理などにも有効です。
これらのスコープアイテムとその内容は、SAP がアップグレードされるのと共に更新される為、常に最新の情報にアクセスすることが可能となります。

SAP Central Business Configuration (CBC)

業務要件に基づいた SAP S/4HANA Cloud, Public Edition に対する設定を、集中的に構成・管理できるように設計されたツールです。
構想・評価フェーズを通じて確定されたスコープを有効化し、導入企業に応じた組織構造の反映、標準機能の基本動作を決定するパラメータ設定を行います。

評価フェーズにおいては、構想フェーズで整理した内容に基づいて Fit to Standard 分析の為にスターターシステムを設定に使用し、実現化フェーズでは、Fit to Standard 分析で詳細に確定した内容を開発システムへ反映させ、テストや本番切替の準備に用いることができます。

また、実行フェーズ以降においても、新しい組織構造の追加やスコープアイテムまたは国/地域を有効化する場合、CBC を使ってこれらの有効化設定を行います。

Migration Cockpit

SAP S/4HANA Cloud, Public Edition には、組込型のデータ移行用のツールとして Migration Cockpit が提供されています。
多数の SAP 標準ビジネスオブジェクト (マスタ/トランザクションデータ) を移行対象としてサポートしており、それらは標準移行フォーマットとして SAP により事前提供されています。
既存システムから抽出したデータをフォーマット上に編集し、SAP へマスタデータや各種残高データ (受注残や発注残、会計残高など) のデータ移行を行うことができます。
他にも新旧コードマッピング、シミュレーション機能なども備えています。

Test Automation Tool

Test automation tool は、SAP S/4HANA Cloud 内でビジネスプロセステストを自動化するためのツールとして提供されています。
主な用途として、実現化フェーズにおける実装テストおよび、実行フェーズにおけるアップグレードやシステム改修後のリグレッションを対象としています。
※SAP によるアップグレード後テスト:PUT(Post Upgrade Test) サービス (オプションサービス) を活用することもできます。テストシステムのマスタデータを使用した基本的な標準機能を検証するサービスである点には注意してください。
※エンドユーザーの受入テストについては、エンドツーエンドのユーザー業務プロセスを横断してテストを行う必要がある為、業務プロセスに即したテストシナリオを作成して、実施することが想定されます。

※SAP S/4HANA Cloud, Public Edition のアップグレードとテストプランに関する事例については、こちらのブログもご参照ください。
https://www.proaxia-consulting.co.jp/engineerblog/blog2024-04/

SAP Activate に準拠した導入ステップ

弊社では、SAP Activate に準拠した形で、フェーズ毎の導入ツールをご用意して SAP S/4HANA Cloud の導入を推進しております。以下は21カ月での導入モデルケースとなりますが、対象スコープや複雑さにより導入期間については変動します。

まとめ

SAP S/4HANA Cloud の導入推進を目的とした方法論 ”SAP Activate” についてご説明してきました。
Fit to Standard を目指す理由、それは継続的なイノベーションを通じて得られる企業全体としての最適化と価値になります。
個別業務の最適化の集積を脱し、企業全体としての業務効率化・メリットの享受の為のシステム導入、そして、これらを実現するためのガイドラインとしての SAP Activate をご活用いただければと思います。